ひたむきな愛に祝福あれ!



……危なかった。

たまたまとはいえ友人と会っていなかったらあの場で鉢合わせていたのは自分である。そうは言っても結局のところ原種の姿は同じなので間接的に見られているかのような感覚に陥るが評価されているのは自分じゃない。ミカゲは草陰から様子を見守りながら安心したように一息。

まさかこの姿が嫌であるはずもないが捉え方は人による。屋敷でのやり取りのように爬虫類は全般的に苦手だという人もいるし(蛙は両生類だが)その場合に投げかけられる視線や言葉に自分は情けないことに耐性がない。

女性が髪もセットしていないメイクもしていない状態で誰かと会うのは無理だと拒絶するのと同じこと。人の姿が整っているとも言えないが、兎角原種の姿は人の姿以上に自信がない。

「──つまりこの木に幸せをお祝いしたいとか何とか思わせればいいってわけ?」

友人のゲッコウガは"なりきり"を覚えているとだけあって上手く演じてくれている。

「数打てば当たるでござるよ」
「オレ達がこなしたいんだけど」
「それは何ゆえに?」
「報酬き」
「慈善活動というやつだな」

騒動が落ち着くまでは身を潜めていよう──そう思ってその場を離れようとしたその時である。


「ミカゲ」


小さく体を跳ねたが声までは出さなかった。

「……ミカゲだな」

振り返った先にはジョーカーの姿が。

「げ、……ゲコ……?」
「ミカゲだろう」

渾身の誤魔化しが効かない。

「どうしてこんな所に隠れているんだ」
 
 
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