ひたむきな愛に祝福あれ!
その特徴的な口調は聞き間違えるはずもないのだが肝心の本体が見当たらない。辺りをキョロキョロと見回していればルーティは自身のギザギザの尻尾をぬめついた何かが人肌と同じだけの温度を持って撫でるのを感じて両の耳をピンと立てた。その時点では喉元まで突っかかったものの何とか声は上げずに、けれど反射的に振り向いて。
「……?」
誰もいない。
「お、おにぃ」
呼ばれて振り返った先でピチカが何やら顔を青くしながら天井を指差すので。ゆっくりと。
見てみれば。
「わ、」
「きゃあああぁあ!?」
隣のリムに悲鳴を掻き消された。
「何て所にいるのよ!?」
「拙者忍びが故忍ばずには居られず」
御免と謝りながら降ってきたのはゲッコウガ──即ちミカゲである。
「うおっ」
彼の着地に合わせてリムはふわりと後方へ飛び上がると何故かネロの後ろに隠れてしまった。先程の悲鳴から察するに照れているという話でもないものと察してネロも頬を爪で掻いて庇うように両翼を大きく広げる。
「わ、私爬虫類苦手なのよ」
「蛙は両生類で御座る!」
「でも舌は伸びるじゃないの!」
「どっかで聞いたようなやり取りだな……」
ネロは呆れたように目を細める。
「どちらも卵を産む、ということは!」
「閃くな」
いつの間に復活したのやら如何わしい発想に繋げようとするリオンをユウがひと睨み。
「あ、そっか……フォーエス部隊を結成してからだとこんな事は初めてだよね」
元に戻るまで任務は中止だという発言にそれは困ると叫んだのは彼である。あんまり大きな声では言えないが彼は暗殺も兼任しているので原種の姿で数日様子見など以ての外なのだろう──この場に姿が見えないルルトとラッシュはそれも良い機会だと本職たるプロレスに原種の姿で乗り込んで励んでいそうなものではあるが。
「ま。俺は可愛いピチカの原種の姿を拝みに来ただけだし」
スピカは溶け出しそうな表情でピチカの桃色の頬に自身の頬を擦り寄せていたが満足したのか離れると近くで待機していたダークウルフの元へ。
「困るってならそいつらに頼みな。行くぞ」
「はい。リーダー」