ひたむきな愛に祝福あれ!
本来であれば上手く受け止められたと思う。
でも今は状況が違う。"二匹"の突撃により床に尻餅を付いて小さく息を吐き出すのは長い耳につぶらな瞳、赤い頬っぺたとギザギザの尻尾が特徴的なポケモンのピカチュウ──その正体こそあのルーティだったのだ。
突撃してきたピカチュウとピチューの正体もお察しの通りスピカとピチカである。そしてふざけて悪ノリしようとしたゼニガメとリザードンの正体も言わずもがな。ここまで言ってしまえばフシギソウの正体だって説明不要だろう。
はてさてどうして今日この日まで人間の姿であった彼らが原種の姿をしているのか──それは無論森林都市メヌエルにある聖樹フィエスタに何かあったに他ならない。とはいえどうせ数日ほどで元に戻るだろうといった具合に一同は周囲が思うよりも楽観的。突然姿形が変わってしまったなんていってもこれが本来の姿な訳だし。
「うええ……久しぶりに戻っちゃったよう」
「こっちなんか仕事の途中だったからな」
ピチカとスピカが口々に話すのをうんうんと聞いていれば不意にルーティの体が浮いた──というよりは持ち上げられた。
「ふっふっふ……こんなに小さくなってしまって……」
鼻を寄せて匂いを嗅ぐこの男は。
「これでは……奥まで入らないな……?」
「やめろ」
ルカリオの姿であるリオンからルーティを念力で取り上げて尻尾で弾いたのはミュウツーの姿であるユウである。普段はあまり身長差が区別付かない二人だがポケモンの姿ともなれば別の話で今のユウの体長は二メートル。よって尻尾による攻撃は至極強烈なものでリオンの体を数十メートル先まで軽々と跳ね飛ばした。
「あ、ありがとう、ユウ」
言えば可愛げもなくふんと鼻を鳴らして念力を急に解くのだから垂直落下。この体に弾力がなければ相当痛かったことだろうなと不時着を余儀なくされておきながらルーティは苦笑い。
「元に戻るまで任務は中止ね」
プリンの姿のリムがルーティを起こしながら言えば誰もが賛同した。聖樹フィエスタの祝福を受けた以上は長く慣れ親しんでいるのも人間の姿の方だし。原種の姿にもメリットはあるだろうが待機の姿勢でいずれ元に戻れるのならその時まで大人しくしておきたいところ──
「……それは困るで御座る」
聞き覚えのある声。
「それは困るで御座るよっ!」