ひたむきな愛に祝福あれ!
よりにもよって。
一番見られたくないと思っていた人に。
「、あれ」
レッドと話していたマークは気付いたように。
「どうしたの?」
「ジョーカーの姿が見当たらな」
「人違いで御座るっ!」
……んん?
「否っ……ポケモン違いで御座る!」
「違わない。お前はミカゲだ」
草陰を揺らして腕を引いたり引かれたりと何やら不穏な空気であるのはジョーカーと。
……ゲッコウガ?
「あれ?」
シュルクが怪訝そうにミカゲだと思っていたゲッコウガを振り返るとゲッコウガも気まずそうに咳払いをした。当たり前だが見た目には全く同じであるためどっちがどっちなのやらやり取りを見ていたルーティ以外の面々は混乱状態。
「え、……ええっと?」
「あれぇどっちがオコゲだっけ?」
「ミカゲだよ」
「どっちでもいいじゃないの」
「良くはないよ」
面々による困惑の声が飛び交う中でミカゲは遂にジョーカーを突き放す。
「じゃあ聞くで御座るが百歩譲って自分がミカゲだったとして! どうで御座るか!?」
自分の胸に手を置きながら。
「好きだのなんだの言ったところでそれは見た目ありきの話で御座ろう!?」
なんだどうしたと混み合うのも構わず。
「……どうせ」
影を落として自嘲気味に。
「これが真の姿だと知っていたら付き合うなんて発想にすら至らなかったくせ、……に……」
声の勢いが衰えたのは。
誰もが驚愕して声を失う彼の行動が全てで。
「はえ……?」
口、……口にくち……くっ付け、……え?
「!?」
空気が固まるのも構わず続け様ジョーカーは首に巻いた長い舌に口付けを落とそうとするのだからミカゲは慌てて肩を掴んで引き離す。
「なな、な……っな……」
「どうして拒む」
「いやこれは常識的に考えて」
「じゃあ何をすれば証明になる?」
ジョーカーは真面目な声色で。
「付き合う前から事前情報として原種の姿に関しては把握していた。例え蛙だろうと蜥蜴だろうとどんな姿だってミカゲはミカゲだ」
真っ直ぐ見つめながら──はっきりと。
「俺は"ミカゲ"を愛してる」