不屈の心は伊達じゃない!
この声は。
「り、りりりりり!?」
鈴虫ではなく。
「忍び装束というものは斯くも素晴らしい……」
その男は怪しく息を弾ませながら。
「身軽さを重視した結果、和を基調に仕上げた忍び装束の最大の欠陥といえばインナーが謎に網目であるという点に他ならない! 超紙耐久のそのインナー、網目であるからにはやはり!」
リオンはミカゲの耳元でぼそりと。
「乳首が勃ったら……目立つんですか」
なんてことを言うんだ。
「うびゃー!?」
みるみる内に顔を真っ赤にして。急ぎ印を結び変わり身の術。それまでミカゲに後ろから抱き付いていたリオンだったが気付けば腕の中にはよく見る怪獣のぬいぐるみ。ミカゲが避難した先は──シュルクの後ろである。
「せせせせせっ……セクハラで御座る!」
「そ、そうですよ!」
流石は良き友人。腕を広げて庇う姿勢。
「……目立たないよね?」
「どっちの味方で御座るか!?」
頼もしいかと思いきや心許ない。
「シュルク。ミカゲが忍び装束を着るのは決まって仕事の時だけだよ。今回だって仕事帰りに立ち寄ったから着ているだけじゃないか」
騒ぎを聞き付けたマークが説明口調で。
「コスプレじゃないんだ。ミカゲがそんな彼の妄想通りに破廉恥な事を考えたりしてあられもない事態に陥ったりすると思うかい?」
至極真っ当な意見に誰もが納得をする。
「マークぅぅぅ……!」
「ご、ごめんミカゲ変な疑いをかけて」
「果たして本当にそうかな?」
リオンは厨二病宜しくといったポーズで。
「私には他者の心を読む眼がある……」
続けざまミカゲを指差す。
「ミカゲ殿のみぞ知る事実をこの私が暴いてやろう!」