スキだらけですが、何か?



『急停車します、ご注意ください』

無慈悲なアナウンスの直後電車は予告通りの急ブレーキ。これだけ揺れても声を上げないのだから戦士たちの洗練っぷりに感動する。自分もこの状況なのだから声を上げてもいいのだろうがどうせ一駅なのだからと激甘判定が勝り口を噤んで耐え忍ぶ選択。忍びだけに。

と。何故かジョーカーに手首を掴まれた。

「へっ?」


かと思うと腕の中。……腕の中!?

「ぁえ、あの」

どさくさ紛れ二号に声を震わせていると電車は程なくして動き出した。背後から舌を打つ音が聞こえたような気がしないでもないが兎角腰から太腿にかけて嫌な手付きで滑らせていた手がようやく諦めてくれたようで安堵の息。助けてくれたのだとしても情けないところを見られたのがどうにも気まずくて沈黙。ジョーカーも無言だし。


そうして。

電車は目的の駅に到着する。


「……ミカゲ」

改札を出て暫く歩いていればこのトーン。

「はい」

あぁあ……怒られそう……

「え」

かと思えば。体が引っ張られた。

「、はぇ」

無言が一番心臓に悪い。どうして自分は顔面偏差値ルナティック男子に手を引かれているのか。

最近の子は考えることが分からない。……
 
 
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