スキだらけですが、何か?
というわけで。
いつの間にか隣町までおつかいに行くという話になっていました。……ジョーカーと。
おつかいといっても目的の人物にファイルを手渡すだけの簡単な作業なのだが何せ政府側の人間をとことん毛嫌いしているらしく覚えている顔なら問答無用の門前払いという話。なので届けるというよりは何も知らない一般人の顔して押し付けるような形に近いが目的さえ達成出来れば問題ないとのこと。
それにしても隣町、……隣町かぁ。
「ぁえ」
司令塔を後にして数分程度。駅に真っ直ぐ向かうジョーカーを目にミカゲは足を止める。
「どうしたんだ」
気付いたジョーカーが振り返る。
「あ……歩いていかないんですかね」
「電車の方が早い」
この時間帯は特別電車内が混み合う。それを知っているからこそ嫌な顔にもなってしまうがじゃあ歩こうかと提案してくれるほど甘くない。
「行こう」
ジョーカーは進行方向へ向き直ると早足で。
「は、はい……」
……思えば。
彼の素顔を見るのは指で数える程度だったな。
そもそも同じ秘密結社SPの一員でありながら仕事以外で言葉を交わすこともないし。仕事とプライベートで顔を使い分けているという点は大きな共通点だがだからといって特別仲が良いという話でも。しなきゃいけないなんてこともないがオフモードという気の小さい時に他の人と一緒に過ごしながら終始無言というのも息が詰まる。
「間に合ったな」
そんな調子でぐるぐる頭の中で考えている間に駅のホームに着いた電車に乗り込んでいた。予定調和とも言えよう混み具合に既に眩暈を覚えながらミカゲは「そうですね……」とあからさまに気が滅入っているような声色で返す。