スキだらけですが、何か?



そもそもの話──天性のオタクたる自分がこんな陽キャの真似事をして目立たないはずもない。木を隠すなら森の中といったようにプライベートではもはや木の根を支える土に擬態していたのに思わぬ昇格ときた。こういう時は楽しいことを考えよう……来週発売の新刊楽しみだなあ……

「おい」
「ひゃい!」

ミカゲは思わず声を上げた。どうやら気付かぬ内に資料を回されていたらしく差し出したはいいもののいつまで経っても反応しないので呼びかけたようだった。……リドリーが。

「す、す、すみません……」

ひええっめっちゃ視線感じるごめんなさいごめんなさい食べないでください!

「どど、どうぞ」

厭に刺さる視線から逃れるようにして受け取った資料の束を今度は隣のカズーイに差し出して。

ふと。手が触れる。

「っ!」
「ごめんなさい!?」

カズーイが小さく肩を跳ねるのでミカゲは両手を反射的に振り上げた。そうなれば当然手に持っていた資料が宙を舞うわけで。ああ綺麗。

「……何をやっているんだ」

隊長の呆れた声が泣きたいくらい刺さる。

「はいいい……」

半分べそをかきながらミカゲは席を立つと散らばった資料の紙を一枚一枚掻き集めた。ふと頭上に影が差して顔を上げれば既に幾つか集めたらしい資料の束が差し出される。

「ぇあ、……ぁ」

ジョーカーはじっと見つめている。

「あ……ありがとう……」
 
 
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