スキだらけですが、何か?



既に面倒なことになってるんですが、それは。

「マーク!」

シュルクが呼び掛けるとマークはこくりと頷いて魔導書を開いた。ばたばたと音を立てて独りでにページが捲られたかと思うと次の瞬間マークの足下に緑色の魔方陣が浮かび上がり、ジョーカーは遅れてミカゲが今まさに背にしている壁にも同じ魔方陣が浮かび上がっていることに気付く。

「──痛くはしないよ」

マークは反対の手を翳して叫ぶ。

「エルウインド!」

呼応するように勢いよく巻き起こった風は抵抗も許さないまま浮かび上がらせたミカゲとジョーカーの体を半分以上開いていたエレベーターの扉の隙間から押し出した。いやいや痛くしないとか格好付けてる割にはシンプルに床に腰打ち付けたし痛いんですけどなんてミカゲが脳内で突っ込んでいれば体の上に人並の重みと影。

「……つ、」

ジョーカーさん至近距離。


「何やってるのよ」


この声は。

「で、デイジー」

マークは顔を引き攣らせる。

「エレベーターが上がってこない訳だわ」
「……あぁあっ!?」

そして呆れる彼女の隣に居たのは。

「こ、これは……どういうこと……!?」


特殊防衛部隊X部隊所属。

腐の世界をこよなく愛する姫──ピーチ。


「ご、ごめん……マーク」
「いや……僕も読みが浅かった」

ミカゲは状況が読み取れないまま硬直。

「ジョーカーは受け派だったのに!」
「えっと」
「あなた何者なの!?」
「俺にそのつもりはない」

ジョーカーは呑気に上体を起こす。

「……だが。責任は取るつもりだ」

未だ跨ったまま。見下ろして。

「……いいか?」
「はぇ?」
「だから誰なのカップリング妄想が」

何が何だか分からないが。

「拙者はこれまでもこれからも末永くノーマルで御座るううう!」


その後。託されていたファイルは目的の人物まで無事に送り届けられたが。

謎に警戒心の高まってしまったミカゲが暫くの間プライベート以外でも頑なに例の眼鏡を外さなくなってしまったのは言うまでもない話。

「やりづらくないのか?」
「そのマスクの方がよっぽど邪魔そうで御座る」
「…………」



end.
 
 
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