スキだらけですが、何か?
……妙な感覚だ。
「ここだ」
二人が辿り着いたのは駅ビルである。
しかしまさか同じ部隊の隊員に尾行されるものだとは思わなかった──気付いた時点でそれこそ何食わぬ顔で合流すればよかったものを電車の中で彼が見知らぬ他人に触れ回られていた現場を目にした直後である所為かどうにもモヤモヤとした感情を拭い去れず、結果として仲間たちから逃げるような真似をしてしまった。
よく分からない。
……俺は。邪魔されたくないのか?
「あのぅ」
聞こえにくいぼそぼそとした声が隣から。
「そ、……そろそろ、手を……」
握ったままだったことを思い出して手放す。
「、すまない」
「いえいえ全然」
この人ときたら眼鏡がないというだけでこれだ。
「はは……」
特に会話もないまま引っ張ってきてしまったが道行く人から当てられる視線が恥ずかしかったのだろう──頬を微かに赤く染めて目を泳がせる彼に何故か心の奥で疼くものを感じた。仕事時と異なり隙だらけである彼のことをあわよくば探りたいとまで思うのは怪盗が故の性分なのか。
……それとも。