春といえば?
「ドクター」
ひと通り話を終えてから口を開く。
「恋とは病に分類されるか否か」
「急にどうしたんだ」
それはそう。
「如何せん多くてな」
「そうだなぁ」
二度も三度も続けばいい加減頭に引っ掛かる。浮かれるなとは言わないが当然この仕事に就いている以上は浮かれてばかりでも困る。病気に分類されるならよく効く薬でも出してもらいたいところだが当然それはないだろうと分かった上で敢えて聞いているのだ。
「まぁ人が増えればそうもなるだろう」
ドクターは腕を組んで息を吐く。
「だがなぁ隊長。悪いことばかりでもないぞ?」
ロックマンは目を丸くする。
「最初の頃の空気感と比べてみてどうだ」
確かに。今の彼らは最初期のピアノ線のように固く緊張の糸を張り詰めていた頃と比べて随分表情筋が柔らかくなったように感じる。それに当然当時の彼らならこんな砕けた話題を自分に振るなどしなかっただろうな。
「おっさんは悪くないと思うぞ」
「……ふむ」
「薬も捗ることだしな」
うん?
「ドクター?」
「おっとと」
慌てて口を片手で覆う姿すら胡散臭い。
「時間も押していることだ」
ドクターは立ち上がる。
「カウンセリングならまた後日頼むよ」