春といえば?
まあ。然程驚く事態でもない。
うちも有り難いことに志を同じくする隊員が増えたことだ。一緒に仕事をしていく中でその勇姿に惹かれるなどよくある話じゃないか。何もそれで仕事が手に付かないと話しているのではなくそうならない為に提案をしてくれているのだから寧ろ助かる。幾らでも聞いてやろう。
「分かった」
「えっ」
カズーイはぱっと顔を上げた。
「仕事に支障を来すというのなら仕方ない」
「た、隊長。まさか、その、本当に?」
思っていた反応と違う。
「検討の段階だ。後に控えている他の隊員との面談内容と照合する必要があるから場合によっては希望に沿えられないかもしれないが」
「そ、そう、それなら……よくはないけど」
表情一つ崩さずに返す言葉を頭の中で即座に組み替えて発言すればカズーイは安心した様子。なんだなんだ心乱されるから一緒に任務したくないという話じゃなかったのか。
「他には?」
「問題ないわ」
恋ってやつは分からないものだな……
「他の隊員との共同任務の回数を?」
「……はい」
向かいの少年は拳を握って小さく頷く。
「俺以外と……あいつが組んでいるのはあまり、見たくないというか……」
こいつもか。
「君の集中力が欠けてしまうという話か?」
「……そういうことになると思います」
自分自身この感情を認めたくないといったようにその表情は何処か不服で。顔に出ないように取り繕っているつもりなのだろうが全く此方と目も合わせない。ロックマンが小さく息を吐くとコウはようやく肩を跳ねて振り向いた。
「ツツイにも話を聞いていいか?」
ロックマンは面談表を確認しながら。
「この話だけで決められる問題でも」
「あ、あいつには言わないでください!」
んんん。
「……検討しよう」
瞼を閉ざして深呼吸。冷静に。
ああ。……春とはそういうものだったな。