春といえば?
夜も過ぎれば日中は暖かな陽気が眠気を誘う今日この頃──諸君らは春といえば一体何を思い浮かべるだろうか。入学や卒業といった出会いや別れもあれば新年より身が入る切り替えの時期でもある。兎角人それぞれあるにしても四季の切り込み隊長ともいえる春の訪れともなればやはり誰も気持ち新たに始めよう踏み出そうといった心構えの人が大半じゃなかろうか。
であれば。例えば仕事に対する不平不満や仲間内の蟠りは取り除き真っ新な状態で春を迎えたいのが本音だろう。そうした隊員の伸び代をサポートするのも隊長の務めというもの。
面談。年に数回の大事な業務。
今日はその日。朝の早い内からスケジュールに組んだ順番に滞りなく各隊員とこうして一対一で話をする。それも難しい話ではない前述の通り何かあれば話せというだけ。何もないのなら最も好ましいが藪を突けば出るのが蛇と本音。
「……バンジョーとの共同任務の回数を減らしてほしい?」
ロックマンが訝しげに視線を向ける先。予め用意されていたパイプ椅子に座り膝の上に両手を置いて頷くのはカズーイだった。
「理由を聞こう」
彼らは種族こそ異なれど連携力は他の追随を許さない程にずば抜けている。ただの喧嘩だので容易に聞き入れていい案件であるはずもない。
「集中が出来ないのよ」
カズーイはそう言って目を逸らした。
「その、……隊長にも恋人はいるでしょ?」
「、……ああ」
「だったらその……汲み取ってほしいんだけど」
……おいおい。
「そ、そういう関係じゃないわよ。でも」
春といえば。
その可能性を懸念していた。
「どうしても、……難しいかしら」
ああ。
紛うことなくこれは……恋、……だな。
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