合宿の時間!
二時間後。
「だー」
情けない声を漏らすのはロイである。
「変な声を出さないでください」
「朝から頭使わせんなって」
「ちゃんと合ってたじゃないか」
ほんの数分程度かと思いきやきっちりきっかり二時間コース。時折質問を投げ掛けられたものの流石は公爵家の息子といったところか否か分からないと音を上げるでもなくマルスの言う通りその場では真面目に答えられていた。だがしかし次いでランニングと外に出てみれば糸が解けたようにこれである。集中力の問題なのだろうがそれなら二時間は持った方なのだろう。
「頭空っぽにして走るから話しかけんなよ」
「tan1°は有理数ですか?」
「無理数!」
キレ気味の回答。
「君は大丈夫かい?」
「はい。……大丈夫じゃないのは……」
マルスの隣を並走するカムイは後ろを見遣る。
「大丈夫か? マーク」
「辛かったら休んだ方がいい」
マラソンの最後の盤面かな?
「本当に運動が苦手なんだね……」
遥か後方を目をぐるぐる回しながら走るマークに並走するアイクとクロム。彼らにしてみれば理由を付けて緩めに走ることが出来るので気が楽なのだろうが対するマークは必死である。
「お……置いていっていいよ……二人とも……」
「まだ半周すらしていないだろう」
衝撃の事実。
「肉付きがいいようには見えないが……」
「多分あれのせいだな。……マーク」
すると。クロムは並走しながら。
「わぁっ!?」
躊躇なくマークのローブの中に手を突っ込んで。
「まったくこんなに持ち歩いて」
魔導書。
「いつ敵襲があるか分からないじゃないか!」
「持ちすぎだろう!」
ヒーロー漫画の修行のようである。