恋泥棒の巣窟!
落ちるところだった。
「てーか半分落ちてた……」
部屋を後にしたネスは未だ熱の引かない顔を両手で覆い隠しながらとぼとぼと歩く。
「致命傷じゃん」
「助かってねーんだよ」
「でも……かっこよかったね」
口々に。……パックマンといえば何処ぞのピンク玉と同じように隙あらば隙を与えたのがいけないとばかりに突っかかってくるタイプかと思えば思いの外親切で面倒見が良くて。ロックマンも仕事以外興味あらずといった具合に真面目で冷酷無比なイメージを抱いていたのだが終始穏やかに物腰柔らかくそれでいて紳士的で──
「いいなぁー」
ピチカは手を後ろに組んで歩きながら。
「やっぱり自分で行けばよかったかも」
行かなくてよかった。
全く。ルーティのお嫁さんになるだ何だのと言う割には浮気性だ。全然タイプが違うじゃないかと言いたいところだが恋に恋する年頃なら重要なのは少女漫画か或いはドラマのように如何にロマンチックに映るかどうかなんだろうな。
「で。誰の忘れ物なんだよ」
気を取り直してディディーが訊ねてみるとネスは持っていた紙袋の中身を覗いた。
「本が二冊と髪飾り?」
「はー? そんなん誰でも持ってそうじゃん」
「片っ端から探すのだるそー」
「待ちなさい!」
子供たちはびくりとして足を止める。
「へ?」
エレベーターのある方角から見えたのは。
「ふええっ!?」