恋泥棒の巣窟!



ピチカは火照った頬を両手で包みながら。

「僕、やっぱり結婚するならマークさんみたいなひとがいいなぁー!」

始まった。

「お前コロコロ変わるじゃん」
「妄想するだけだってば!」
「でも……王子さまみたいだったね」

リュカが笑いかける。

「でしょでしょ!」
「わ、分からなくもないけど」
「でもあれ確か軍師だし」


不意に陰る。


「ふえ」

ピチカはきょとんと見つめる。

「し、シュルクさん……?」
「駄目だよ」

片膝を付いた姿勢で。

困ったように眉尻を下げながら。

「あの人は僕のだから」

何処か儚さを孕んだ表情で。

「他の王子様を探してね」


……。


「シュルクー!」

離れた場所からマークが呼びかける。

「ロックに報告しよう!」
「あ、うん!」

シュルクは立ち上がると急ぎ駆け出そうとしたがそうだ忘れてたとばかりに。振り向きざま人差し指を立てて唇に当てながら微笑。

「またね」


恋泥棒の巣窟が過ぎる。


「なんやなんや」

エックス邸に戻ってきた子供達はリビングにあるソファーを占領して物の見事に骨抜き状態。

「兄ちゃんって中の下だよな……」
「急にディスるやん」
「おにぃも……大人になったら王子さまに……」
「重症ですね」

その日子供達が珍しく夕飯を残してしまったのは言うまでもない話。



end.
 
 
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