恋泥棒の巣窟!
落ちるとこだった(二回目)。
「どうする?」
「なにが」
「ここまで会った奴全員恋人いなかったら」
トゥーンが噴き出した。
「えっ僕隊長さん恋人いるって聞いたよ?」
「どんな令嬢だよ」
「絶対どっかの偉い人の娘とかだろ」
残念ながら隣に居たのがまさしくそれである。
「てーかピチカお前恋人いても見境なしかよ」
「ちっちがうもん」
あわあわと手を振って否定。
「妄想するだけならただでしょ!」
「やめとけやめとけ。釣り合わないじゃん」
「なーっ!?」
そんな感じで騒いでいると。
「あれ」
前から歩いてきたのは。
「珍しいね」
「どうしたんだい?」
噂の顔面六百族コンビ。
「くっ」
任務上がりの様子のシュルクとマークの登場にディディーとトゥーンはたじろぐ。確かにこのフォーエス部隊は顔面偏差値が総じて高いが、ハードルを底上げしているのはこの二人だと言っても過言ではない。どちらも頭の回転が早い上にイケメン御用達の剣士ときた。当たり前のように優しく温厚で背も高くて申し分なし。
ほれ見ろ。イケメンオーラに弱いピチカなんか早速ネスとリュカの後ろに隠れてるし。会話させようものなら負け確定──ディディーとトゥーンは密かに視線を交わして頷く。今こそ結託の時!
「この本!」
ディディーは本を差し向けながら。
「忘れ物していませんかッ!」