例のトラップダンジョンならどんな相手でも屈服させられる説



「現れたわね」

ルルトとルキナは目の色を変えて構える。

「この先は行き止まりでしょうか」
「分からないわ。でも」

二人の前に立ちはだかるのは関取のような姿をした亜空軍ンガゴグ。本来なら攻撃を加える都度巨大化する特性を持っているのだが既に体色は赤の最大サイズでの登場だった。少し様子が異なるのは何故かボロ切れのような衣服を身に纏っているという点だが──


「……マリオの提案ですよね?」

リンクは怪訝そうに映像を見つめて。

「気の強い正義の女戦士を辱めるのは巨躯のモンスターだって昔から相場が決まってるだろ」

マリオは腕を組みながら答える。

「くっ殺せってなるやつ?」
「そうそう。薄汚い連中に好き勝手されてめちゃくちゃに正義の心をへし折られるという……」


三人が遠くにいる。


「そんなことを考えていたんですね……」
「ちょ、」
「イイトオモウヨー」
「棒読み──」
「僕はちょっと理解できないな……」
「お前らぁああッ!」

わざとである。……多分。

「くふ……百戦錬磨のプライドの高い女騎士が下衆で卑しい下等生物に頂点から引き摺り下ろされ抵抗虚しく守り抜いてきた純潔を穢される……希望に満ち溢れたその目が心折られてハイライトを失うのが愉しみだよ……」
「よかったですね分かってくれる人がいて」
「仲間じゃん」
「仲間じゃねえよ!」


そうこうしている間に。


「しまった──!」

応戦中に剣を弾かれてしまったルキナが表情に焦りを滲ませたが刹那ンガゴグの振るった拳の重い一撃が腹部にクリーンヒット。

「ッ……か……」

一方で地に伏していたルルトは戦いの最中崩れた髪を鷲掴みにされ無理矢理に上体を起こされる。目の前に立ちはだかるンガゴグ。ルルトは眉を顰めながら、それでも正義の灯火は失せることなく目と鼻の先の滅するべき敵を睨み付ける。
 
 
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