ダークフォースは眠らない



見上げる。垂れた黒髪が顔に触れる。

「こんばんは?」
「ギャアアアアッ!?」

天井に真っ黒な染みを作って。そこから生えた黒の触手に逆さ吊りにされながらお馴染み目をかっ開いてスピカを見下ろしていたのはダーズ。にんまりと口元に笑みを浮かべているものだからどう足掻いてもホラーである。

「り、リーダー!」

悲鳴を上げて尻餅を付くスピカにダークウルフが駆け付ける。

「おま、お前、い、いつから、」
「だっておれのこと呼んだでしょ?」

ダークウルフの手を借りてどうにか立ち上がるも心臓が一向に落ち着かない。

「混沌様ってちゃんと寝てるんスかぁ?」

そもそもの話がこっそり覗きに行かなくともそうやって直接確かめればよかったのだ。歩み寄りながら軽薄な態度で訊ねるダークフォックスをスピカは恨めしそうにひと睨み。

「一緒に寝たいの?」
「勘弁しろ」
「昨日は皆で寝たよ」

皆、とは言わずもがな触手のことだろうがまさかキーラもその場に居たのだろうか。

「あっ」

ここでようやくダーズは床に着地して何処か嬉しそうに扉を振り返ると。

「お兄様がはやく一緒に寝ようって!」

そう言ってダーズがぺたぺたと扉を触れればそうして触れた側から黒い染みが広がった。ダーズはそのまま、ずずずと黒い染みの中にゆっくり体を通しながら呆気に取られるスピカ達を振り返り。

「じゃあね。おやすみなさい?」
 
 
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