遊ばまほしきばかりなれど
破壊神クレイジーハンド。
その肩書きから壊すことしか脳がない脳筋だと捉えられることが多いがそうではない。何せその正体は創造神マスターハンドの双子の弟──似ているのは背丈や顔の作りだけに非ず。亜空軍を率いる主将とだけあって戦況を瞬時に把握して少ない手数で有利に駒を進めるその姿は兄のマスターハンドと瓜二つ。天才の名を欲しいままにするのは兄だけではない。
豪語するだけの実力は当然のこと。
やってみろよ。
お前の思惑通りにはさせない!
「……あ」
シンプルに負けた。
「流石は破壊神クレイジーハンド。冷や冷やとさせられる盤面だった」
ムカつく!
「い、一応聞くけど敗因は何だと思う」
「二十八手目のビショップ」
自分が気にしていた点をマスターにぴしゃりと言い当てられてクレイジーは縮こまる。
「あーもう! 次ッ!」
「お前はまたそうやってすぐムキに」
「──ぼくもやりたい」
名乗り出たのは。
「お兄様。だめかな?」
「ルールを覚えられたのなら」
「ばっちりだよ!」
クレイジーはむっとする。
「お前どうせ弱いだろ」
「わからないよ?」
「はは。破壊神の相手になるといいのだが」
こいつ弟任せにするほど僕の実力が落ちぶれているとでも言いたいのかよ!
頭にきた! 手加減なしでぶっ潰してやる!