恋は盲目とは言うけれど
……正義部隊?
今日は一番警戒していた隊長は会議でここには来られないはずだし。というより頭の硬そうな隊員(失礼)はこの催し事に興味すら──
「恥を知りなさい!」
びりびりと耳に響くこの声は。
「参加する以上、ルールは厳守すべきだわ!」
「更衣室で着替えてくるヨロシ!」
ルルトとミェンミェン。正義部隊の中でも新人ではあるがその正義感は隊長に負けず劣らず。
「うるさ……」
クレイジーは不快そうに眉を寄せる。
シンプルにまずい。あくまでも二次元の世界での話なのに悪役のキャラクターにコスプレしている参加者をじろじろと観察しては厳しく指摘している時点で正義の鑑というより偏見の塊。気持ちは分からないでもないがオタクとしてはそれはそれこれはこれ案件で御座る……!
「あっちに」
「止まりなさい!」
びりびり。
「随分と挑戦的な仮装をしているわね」
目を付けられてしまった。
「なかなかの完成度じゃない」
腰に手を当てて頭の先から爪先までじっくりと見られたのでは自然と体も強張る。するとクレイジーは遮るように左手を間に差し込んで。
「ちょっと兄さんに近付かないでくれる?」
「本物の兄弟か?」
ミェンミェンが訊ねるとキーラと一緒に後ろで見守っていたダーズはきょとんと首を傾げて。
「……おれたちは本物だよ?」