恋は盲目とは言うけれど



「あっ」

話を逸らすべくマークは声を上げる。

「あれ。ミカゲじゃない?」

シュルクが視線を向けると確かに今回の仮装のテーマであるマスターハンドの格好をしたミカゲが歩いていた。最初に聞いた時は驚いたけどこの手の界隈ではなかなかメジャーなコスプレらしくその事実にも驚いたっけ。

「……あれ」

シュルクは訝しげに。

「隣を歩いているのは誰だろう」

併せ、とやらをしているその相手だろうか──最初に会った時より背が縮んでいるような気もするし身長差が気になる。ああいうのは撮影の時に頑張って調整するんだろうけど。

「行ってみよう」

すっかり目を奪われながらシュルクがそのまま立ち上がって歩き出すとマークは置いて行かれた紙袋を慌てて手に提げながら追いかけた。

「シュルクっ」

遮るように人の群れ。シュルクは背伸びしてミカゲの行く先を目で追っていたがそれ故に注意力が落ちてしまい人にぶつかってしまう。

「す、すみませ」

言いかけて。

「えっ」

揺らぐ薄青の髪に思わず目を開く。

「マスターハンド?」
 
 
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