恋は盲目とは言うけれど
「っは、……やっと出られた……」
人混みを掻き分けて空いた場所に出てきたのは金髪の青年。託されたメモ用紙をポケットから取り出して戦利品を確認。……大丈夫そうだ。
「きゃーありがとうございます!」
黄色い歓声を送る女性陣に軽く手を振って彼の元へ駆け寄ってきたのは銀髪の青年。
「……人気だね」
「あはは」
疲労を感じて溜め息を漏らすのはマークとシュルクの二人だった。頼まれでもしない限り来るはずもないこの場所にこの二人が紙袋に大量の本を抱えて歩き回っているのは言わずもがな、ミカゲに頼まれたからである。
「この時期なのに熱気が凄いな」
普段の衣装でいいと言われたのでそれに従って来たが少し歩いただけで呼び止められて撮影をお願いされてしまう。本物みたいでかっこいいとか何とか言われるのがよく分からない。本物なんだけどな。
「ふー」
ちょうど人が退いたのを見てマークとシュルクは救われたようにベンチに並んで腰を下ろす。午後までに頼むとメモ用紙を託されたけど正直ぎりぎりだな。
「……寒いのかい?」
ふとマークが隣を見るとシュルクは両手を擦り合わせて縮こまっている。彼の場合衣装が衣装だから足元が特に冷えるのだろう。
「貸して」
マークはシュルクの手を取って息を吐く。
「はー」
これで少しでも暖かくなれば。
「ま、マーク」
……!
「ごっごめん!」
互いに顔を背けてしまった。顔が熱い。
誰かに見られていませんように。