恋は盲目とは言うけれど
「──!」
電気を纏った渾身の踵落としを防いだのは突如として展開した薄青の防壁だった。まさかコスプレをしているだけなのにそんな力が覚醒するはずもない。……ということは。
「全く。エンターテイメントに観客を巻き込むとは何事だ」
小さく息を漏らしたそのひとこそ。
本物の、マスターハンド──!
「はっえっ!?」
クレイジーは驚いたように交互に見る。
「す、すみません」
ミカゲは両手を軽く挙げて目を逸らしながら。
「拙者は」
「てーか声違うし!」
もっと早く気付いてほしかったなー!?
「ミカゲ!」
「は、はあ!?」
駆け寄るマークとシュルクにルルトは驚愕。
「ミカゲだったの!?」
「紛らわしい格好してどうするか」
「弁明の余地すら与えてくれなかったじゃないで御座るかぁ!」
見た目が見た目なのにシュルクの後ろに隠れて嘆く様はミカゲそのもの。マークとシュルクは顔を合わせて苦笑いを浮かべて。
「お前も区別くらい付くようにしろ」
「な、なんか背が高いなとは思ってたんだよ」
「それは侮辱と捉えても?」
「やっ──ちがちが、違うって!」
あちらも盛り上がっているご様子。
「恋は盲目とはよく言ったものだな」
「そうなんだぁ」
キーラとダーズは口々に。
「盲目にも程があるで御座るううッ!」
……後日。
一般参加者の手によって写真や動画として収められた一部始終がSNS上で話題になり、当然それがロックマンの目に留まらない筈もなく。
「理不尽で御座るぅぅ……」
事の発端であるミカゲだけたっぷりと絞られたのは言うまでもない話。
end.
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