ロックマンの何もしない一日
レイアーゼ中央司令塔内部──フォーエス寮。
「兄さん」
ロックマンの部屋。マークが通話を終えたタイミングでルフレが契約書の束を差し出す。
「ようやく全員分の認め印を貰ったわ」
「ありがとう。お疲れ様」
「兄さんも」
マークは苦笑いを浮かべる。
いつの間にか時刻は午後八時──自分は殆どの時間電話対応に追われ他の隊員は任務に会議に引っ張り凧。今日に限って仕事が山積みだった可能性もあるだろうがそれにしたってこの仕事量をロックマンは毎日一人で熟しているのか。
「あーつかれたー」
扉もノックせずに入ってきたのはパックマンである。最初こそ乗り気であった彼も後半になるに連れてペースが落ちてようやくのご帰還。
「パックマン超眠いんだけどー」
「人の部屋の前で何を文句垂れているんだ」
ギョッとした。
「た、たたた隊長じゃん」
「隊長だとも」
ロックマンは小さく笑ってパックマンの横を通り過ぎるとルフレがマークに渡そうとしていた契約書の束をさっと取り上げた。
「ふむ」
急に戻ってきてこんな調子なのだから何故だか冷や冷やする。
「リドリーとカズヤから貰えたのか」
「……苦労しました」
頭を抱えながら応えるルフレ。
「もっとゆっくりしてきてもよかったのに」
「お前たちのことは信頼しているが築き上げてきた他の信用はまた別だからな」
マークが退くとロックマンは厚みのある椅子に腰を下ろす。デスクの上には恐らく次の会議で目を通すべきであろう資料や参考書。
「さて」
「隊長まさかこれから全部それを?」
「そうだが」
「今日一日は何もすんなって言ったじゃん!」
詰め寄る三人にロックマンはにっこりと。
「仕事を増やしておいて何を言ってるんだ?」
絶対零度の冷徹オーラ。
「ルフレとマークは夜食の手配を」
「は、はい」
「パックマンは部屋に戻って寝なさい」
「いやオレまだ働けるし!」
「寝なさい」
まったく。
ロックマンは閉まる扉を目に溜め息をひとつ。
……やっぱり、自分は。
何もしない方が圧倒的に疲れる。
end.
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