ロックマンの何もしない一日
……大丈夫。
たまたまこっちを通りたくなっただけ。
心の中で言い聞かせながら裏通りに入ると言い争いの声が聞こえてきた。凝視するまでもなくパンチを食らった男が倒れ伏せる。見紛うことなき喧嘩の様子にロックマンは立ち尽くす。
「オイオイ」
かと思えば背後に影。
「見せモンじゃねえぞ坊主?」
二メートルはあろうかという巨漢である。成る程とロックマンは感心を抱いて。
「随分と育ちがいいな」
「オメーさんは随分と小せぇなあ?」
「食の文化が違うんだろう」
怖気付いた様子でもなく淡々とした態度で返すロックマンに巨漢は舌を打つ。
「ふん!」
虫の居所が悪いのか否か握り拳をコンクリート壁にぶつけて減り込ませる。……器物破損罪。
「かっ……は……」
……暴行罪。
「君たちは何をしているんだ?」
ロックマンは訊ねる。
「痛い目に遭いたいみてぇだな」
質問を飛ばしただけだというのに。
囲いが出来るとは。
「坊主。地面の味を知っているか?」
巨漢はニヤリと笑って顎をしゃくる。
「存じ上げないな」
男たちが襲いかかる。
「思い知らせてやれ!」