ロックマンの何もしない一日
天空大都市レイアーゼ、繁華街。
暇すぎる。
賑やかな街に繰り出してしまえば暇を持て余すこともないだろうと高を括っていたが図書館に赴いて本を読んでも普段は絶対関わらないゲームセンターに足を運んでみても何一つ満たされない。世間一般的には仕事の多くはストレスを発症させる要因であり忌み嫌われる対象ではあるがまさか自分から仕事を取り上げるとこうもやることがないものとは──世に聞くブラック企業が聞いたら勧誘が殺到しそうなものだ。
「……ん」
クラクションの音に釣られてロックマンが顔を向けると信号のない横断歩道を渡ろうにも交通量が多く、おろおろするばかりの女児がいた。辺りを見回してみても誰も興味すらないらしく薄情なものだなと息を吐く。……仕方ない。
人助けは仕事の内には入らないだろう。
「──ありがとうございます!」
ただ単に一緒に手を上げて横断歩道を無事渡り終えただけだというのに女児はこれまた丁寧に頭を下げてお礼を言った。ロックマンは紳士の如くその場に片膝を付くと女児の手を取って。
「今日が良き日でありますように」
トドメの紳士スマイル。
「お気をつけて。……お嬢さん」
このような乙女ゲームよろしくといった言動もフォーエス部隊の隊員にとっては違和感のない通常運転そのものなのだから口から生まれたのではないかと囁かれるのも納得である。女児が恥ずかしげに頬を染め何度も頭を下げてから立ち去るのを見送って立ち上がると。
「……?」
裏通りに駆け込んでいく人影を見つけて。