犬猿の仲なれば



……へ?

そんな声が聞こえたと思えば次の瞬間には扉のすぐ横の壁がブラピのデンショッカーによって崩されていた。ただただ呆気に取られるばかりのスピカを差し置いてロックマンはゆっくりと立ち上がると短く息を吐き出して。

「随分と間抜けな顔をしているようだが」

ロックマンは自身の服を整えると含み笑い。

「まさか──全てを諦めて身を委ねるつもりでおられたかな?」

途端、スピカが茹で蛸の如く顔を真っ赤に染め上げたのは怒りか屈辱か、はたまた羞恥心からか。

「リーダー!」

即座に駆け寄ってきたダークウルフがスピカの衣服を整えながらロックマンを睨み付けた。

「てめえ……ッ」
「怒りの矛先を間違えているのでは」

ロックマンは小さく息を吐く。

「どういう」
「貴方が犯人でしょう」

ルフレが睨み付けた先にはダークルイージ。

「なっ」

ダークマリオは諦めろとばかりに肩ポン。

「お前まで!」
「残念ながらお見通しだわ」

……色々と読めない。

「っていうか」

スピカはロックマンを勢いよく指差す。

「お前、薬を盛られたんじゃ──」
「俺の体の作りは他より少し特殊なんだ」

ロックマンは最初と同じ冷めた目つきで。

「素人の薬など効かないさ」


そんなの有りかよ!?


「でもさっきまで傷一つ付かなかったのに」
「簡単な話だわ」

ルフレは人差し指を立てながら解説する。

「壁の一点だけ薄く作られていたのよ。自分が万が一不慮の事故で閉じ込められてしまった際脱出できるようにね」

つまり。

ロックマンの距離が妙に近かったのはどの辺りであれば壁が薄いか確かめる為──

「……さて」

ロックマンは瞬時に青い装甲を身に纏う。

「利害の一致というやつだ」

ダークルイージに視線が集中する。

「文句はあるまいな?」


……後日。

無事(?)廃ビルは取り壊されたのだとか。


「リーダーは諦めてなんかなかったですよね」
「え?」
「ですよね?」

ダークウルフの視線が暫くの間痛かったのは。

……多分、気のせいではない。



end.
 
 
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