犬猿の仲なれば



「くっ」

脚に電気を纏わせて最大火力の蹴りを扉にお見舞いしたがびくともしない。こういったご都合主義全開の仕掛けはそれとなく体験してきたがミリも関わりたくないと願っていた例のあれに巻き込まれるとは。……しかも。

犬猿の仲である正義バカのこいつと──!

「リーダー!」

今度こそ間違いなく聞き覚えのある大きな声にスピカはハッとして扉を見る。

「隊長!」

続けざま聞こえてきたのはパックマンの声。

「パックマン知ってるよこれ多分ガチであれをやらなきゃ出られない部屋だろ!」
「見てみたいような見たくないような……!」

この悩ましげな声はデイジーか。

「り、りぃだ……っ俺、おれぇえ……!」

情けなくも鼻を啜りながらべそかいているのはダークウルフの声。

「絶対……絶対してほしくないですぅぅ……!」
「するわけないだろッ!」

扉の前は阿鼻叫喚である。というよりはっきり声が聞こえるくらい壁が薄いのがキツい。

「高らかに宣言してくれて助かる」
「当たり前だろうが」

睨み合い。

「てめえとまぐわうくらいなら舌を噛み切って死んでやるよ」
「素晴らしい心意気だ。感謝する」

にっこりと満面の笑みに苛立ちも募るばかり。

正義と悪。表と裏。白と黒──挙げればキリがないほど正反対の立ち位置である二人だがプライドは揃いも揃って天より高い。よって二人の背景には龍と虎が激しく火花を散らす有り様。

一生、出られる気がしねえ……!
 
 
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