犬猿の仲なれば



ばちん、と。何かが弾けるような音がして強制的に意識が引き戻される。スピカが飛び起きた先で影を見つけた。すぐに駆け寄ってこない辺り目覚めて間もないぼやけた視界でも忠犬の彼ではないことくらいは判別できて。

「……起きたようだな」

声を耳にするなり血の気が引くのが分かった。即座に立ち上がり頬に黒い閃光を跳ねさせるも肝心の相手が構えようとしない。

「そう騒がないことだ」

その男──ロックマンは冷めた目を向ける。

「気が散るだろう」

スピカは辺りを見回す──ベッドやソファーにローテーブルといった最低限の家具のみが揃えられた白を基調にした一室で広さは七畳程度。扉が一つあるだけで窓はない。どういうことか何かをずっと考えている様子の彼だが罠を疑う程の隙を見せつけられたのではそれに乗らない手はないというもの。スピカは警戒を怠らないまま扉に近付いていきドアノブに手を掛ける。

「、?」

……開かない。

「残念ながらその扉は施錠されている」

いつの間にか背後にいるのだからスピカはさながら猫のように毛を逆立てる勢いだった。

「お前を捕らえたまではよかったんだがな」

状況が読めない。

「廃ビル周辺の電磁波の効力が消えるまで休憩がてら空き部屋で仮眠を取ろうと思って入ったのが運の尽きだ」

ロックマンは溜め息。

「どうにも不思議な力が働いていて部屋のすぐ外で待機している隊員の手でも開けられない」

そんなことがあるのか?

スピカは疑問符を浮かべながらようやく扉の真上に掲げられたプレートの存在に気付く。

「、せっ」


セックスをしないと出られない部屋。


「おい」
「目の調子が芳しくない」
「現実逃避をするな!」

気持ちは分かるけども!
 
 
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