今宵、最高のひと時を
各席で辿々しいながらも指名が為され、次第に盛り上がりを見せる中その男はなだらかに流れ落ちる柔らかな髪を手に梳いて。
「夜の寒空を流れる星の群れの煌めきも貴女の前には霞んで見える──」
愛おしそうに掬いあげては唇を滑らせる。
「今宵の甘美なひと時に感謝を」
「あらあら」
その女性はくすくすと笑って。
「口がお上手ですね」
パルテナが指名したのはロックマンだった。
「とんでもない」
胸に刺した赤い薔薇が際立つ白いスーツに身を包んだロックマンはにこやかに。
「誰にでも囁くほど安い口ではないさ」
双方背景に煌めきと印象に合った華を浮かべて会話をしているが向かいのソファーにヘルプとして座っていたジュニアとパックンフラワーはそれぞれジュースをストローで飲みながら。
「楽しそうだなー」
「アレは腹の探り合いってヤツだぜ坊ちゃん」
一方。
「姉さん!」
現在の立場上物に当たるなど言語道断であるが為声を上げながらもカムイは行き場のない拳を固く握りしめて奮わせながら。
「僕ばかり選んでどうするんだ!」
四回目である。
「どうもこうもないです」
カンナは珈琲を飲みながら澄まし顔。
「弟の不貞行為を見逃すわけにはいきません」
「接客業だよ!」
「私で我慢してください」
言い争う二人を目にシモンとリヒターは。
「これが。姉弟愛というものか」
「違うと思うけどな」