今宵、最高のひと時を
いやいや。
「そういうことだ。案内してやってくれ」
いやいやいやいや!?
「こっ、……こちらへ」
慣れない敬語で案内するのはリュウ。そんな彼のぎこちなさを面白そうにニヤニヤと笑いながらルキナの肩をぽんと叩いて連れていくケン。いずれもうっかりボタンが飛んでしまいそうなほどスーツはぴちぴちである。
「さっ楽しもうぜ」
「ルキナ!」
「あんたはこっちだ」
ルフレの行手を阻んだのはクラウド。
「まずは席に着いてもらう。多少強引にしても構わないとのことだ」
そう言いながらルフレの肩に手を置いて食堂の奥へ進んでいく。
「……今回の催しを提案したのは隊長だ」
あれよあれよという間に。
「文句があるなら」
ルフレはソファーに座らされて。
「指名しろ」
目の前のローテーブルの上に置かれたのは黒い表紙のメニュー。きょとんとしていたルフレが注がれる視線に促されるがままそれを手に取り広げてみれば眩しいばかりの加工を施した眉目秀麗、容姿端麗な男性陣の写真の群れ。
共感性羞恥とはこういう状況を指すのだろう。ルフレはそんな思考を何とか振り払うと改めてメニューを睨みつけて。──ぱたんと閉じる。
「兄さんで」
そんなことだろうと思った。