今宵、最高のひと時を
ロックマンが指定してきたのは夕方六時に司令塔の中にある食堂に集まること。それだけなら何ら可笑しなことはないのだが重要なのは兄も含めて男性陣がこの場には居ないこと。最初に指定の時間まで外で時間を潰してきてくれと言われた時は何か知らないかと兄に訊ねたが当然のようにはぐらかされてしまったし確実に何かある──ルフレはぐるぐると思考を巡らせる。
「どうかしたか?」
ミェンミェンが怪訝そうに訊くとルフレはようやく現実に引き戻された。気付けば指定された食堂の前である。ルフレは首を横に振って、
「なんでもないわ」
「そうか?」
ミェンミェンは扉を見つめる。
「なんだか緊張してきましたね」
「私が開けましょうか?」
苦笑を浮かべるしずえとドアノブに手を掛けるトレーナー。誰もがごくりと息を呑んで。
遂に。扉は開かれる。
「……え」
室内は全体的に暗く控えめな照明と流れている音楽が雰囲気をムーディに仕上げていて。普段目にする食堂とはガラリと変わっている様子に揃って呆気に取られていると。
「いらっしゃいませ」
カウンターらしき場所から声をかけたのは。
「ど、ドクター?」
「突っ込まんでくれ」
何か言われるより早く片手をあげたドクターは黒のスーツでビシッと決めている。
「団体様だな」
「えっと」
「プランの説明は──」
「ちょっと待ってください」
前に歩み出てきたベレスが冷たく見据えて。
「先生として見過ごせません。説明を」
「分かった分かった」
ドクターはどうどうと両手をあげながら。
「ホストクラブ。分かるだろ?」
……はい?
「早い話が──あんたらをもてなすための余興みたいなもんだ。訝しいところもあるだろうが物は試しと楽しんでいってくれ」