知らぬが仏であるならば



深く。深く。兎角心音を落ち着けようと無理矢理深呼吸をしながら祈りを捧げるように手を組むその場所は冒頭に出てきたレイアーゼ都内にある教会の告解室だった。

「罪を犯しました」

遠く聞こえる。

「依頼人を見殺しにしました」

死者の声。

「ごめんなさい」


ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。


「そうか」

司祭の男はあっさりとしていた。当事者でないのだからこのくらいの反応が当然だろう。そうして顔を出した司祭の男の正体があの時と同じ光の化身キーラであってもミカゲは身構えずに青ざめた顔で見上げていた。

「重症だねえ」

あっけらかんとした様子でひょこっとキーラの後ろからダーズが顔を覗かせる。

「あーあ」

次々と現れる。

「壊れちゃった」


こうして神々が自分を見下ろすのも。

何かの思し召しなのだろうか。


「やっぱり違うんだねえ」

クレイジーはクスッと笑う。

「あいつら。同じ仕事与えられてもまずもってこうはならないじゃん」
「それが人間とそうでない物の違いだろう」

マスターはミカゲを見つめる。

「さて」

ミカゲは黙っていた。

「治療の時間だ」
 
 
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