知らぬが仏であるならば
阻止しなければ。
彼らの標的、即ち此方の依頼人が殺されたら。
……殺されたら?
「仕事も楽じゃないっスよねぇ」
気付けば、ダークフォックスは携帯端末を取り出して弄っている。隊長の目の前でいいのかと思わず目を見張ってしまうくらいにはいわゆる思う壺というやつだった。
「へー。大学生」
その声はわざとらしく。
「落ち着いたらまた更新すんのかなあ」
ざわざわ。
「楽しみっスねぇ」
──五月蝿い。
「……フォックス」
スピカが呆れた声で呟いた。
「からかいすぎだ」
月明かり。ダークフォックスの目と鼻の先には水で模った苦無。その切れ味を侮るなかれ携帯端末は真っ二つにされてしまい屋根の上に──落ちる寸前で煙と化して消滅。
「……知っているのか」
ミカゲはあくまで静かな口調で問う。
「彼らの間柄を」
スピカは返す。
「知りたいのか?」