知らぬが仏であるならば



はくはくと口を動かしながら腰を抜かしているこの男の名はミカゲ。そして告解室の外側からひょっこりと顔を出したのはなんとクレイジーだったのだ。あわあわと床を四つん這いになって這いながら告解室を出て振り返れば司祭だと思い込んで話していたその相手はキーラ。

「あれぇ。懺悔は終わったの?」

頭上に影が差して恐る恐る見上げればきょとんと首を傾げて見つめているダーズの姿。

「教会内では静かにしろ」

弟が居れば当然兄も。……いやいや教会だからって神様勢揃いなんてあっていいはずが。

「で。なんで殺したくないの?」

クレイジーの問いかけでようやく張り詰めていた糸がぷつんと切れてミカゲは立ち上がった。それらしく構えてはみるものの現在はオフの姿なので見るからにオタクの風貌である男がそうして身構えたところで。

「別に取って食いやしないよ」

対するクレイジーは気怠そうに息を吐く。

「ここで暴れたって利点ないでしょ」

そもそもの話が教会である。

「……何用で」

当然のように警戒は解かないままけれど構えは解いてミカゲは質問を投げかける。

「こういうのは早い者勝ちだって言うけどさ。利害の一致なら話は別じゃん?」

そう言ってクレイジーが視線を投げかけた先で靴音が響いた。尚も冷たくじろりと睨み上げるようにミカゲが視線だけ向けた先には計四人。

「お前に依頼を寄越した相手──」

先頭のスピカはポケットに手を突っ込みながらミカゲを見据えて。

「俺らの標的ターゲットだっつったら……どうする?」
 
 
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