知らぬが仏であるならば




天空大都市レイアーゼ。

「……神よ」

都内で最も大きな教会にある告解室の中で手を組んで祈りを捧げる男が一人。

「拙者、……私は、懺悔します」

言い直して硬く瞼を瞑る。

「話しなさい」
「……はい」

司祭は薄笑みを浮かべていた。

「私は……暗殺業を担う者です。かれこれ数年──つい先日も依頼を受けました」

男は眉間に皺を寄せる。

「……私には出来ません」


依頼人の指定した標的を手にかけるなんて。


「標的を確認したの?」

声音も口調も変わった気がするが男は答える。

「依頼人も標的も仮名だけ。余計な情が湧いて躊躇いを生じてはならないからと基本的に依頼人、標的共に経歴は探らず依頼金を受け取った時点で職務放棄は認められない……」
「金だけ貰ってトンズラすればいいじゃん」

男は思わず立ち上がる。

「拙者はこの仕事に誇りを持ってるで御座る! 業務に傷が付くような真似までは!」

そこで、はっと我に帰って。

「殺せばいいじゃん」


心臓が大きく鼓動する。


「依頼人のこと」
「ほぎゃあああっ!?」
 
 
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