You are Game Master!
──何が起こった?
「アメイジング!」
大きく盛り上がりを見せる観衆の中で一人取り残されたかのような感覚に陥る。先程の試合の光景が繰り返し脳内で再生されてそれでも理解が追いつかないのでは言葉も発せずに。
「おいしっかりしろよ」
仲間が背後から声を掛ける。
「相手の餓鬼は片手しか使ってねえんだぞ」
「ッ五月蝿い! 分かってる!」
台を拳で叩けば一瞬だが場が静まった。手荒くレバーを動かしてキャラクターを選び直す。
……たまたま運が良かっただけだ。
「くそ、」
調子に乗りやがって! こうなりゃ"あれ"を使って死ぬほど後悔させてやる!
「お相手さん。だいぶ切羽詰まってるね」
「仕掛けてきたな」
「え?」
クレイジーがきょとんと首を傾げた頃には既に次の試合が始まろうとしていた。とはいえ焦る必要もない。初戦で勝ち星を挙げているので万が一負けたところで観衆が盛り上がるだけ──
「……!」
開始と同時に目を開く。
「さっきより」
マスターの台詞が確かであればコマンド入力による妨害だろう。此方の操作に対し反映されるキャラの行動に僅かに遅れが見られる。店員も気付かない微々たる差だろうが操作している側にとってはその差が重いハンデだ。
「五フレーム」
と。マスターがぽつりと呟いた。
「分かるの?」
「俺まで気付かない筈が無いだろう」
静かに目を細めて。
「この程度の事」
ゲーム画面を見据える。
「造作もない」