You are Game Master!
思わず舌を打ちそうになるも観衆の前。自分の隠し技を生かすには必要以上に視線を集めるというわけにはいかない。
やむを得ずこの場は堪えて向かいの筐体の前に移動。荒々しく椅子に腰掛ける。
「安心しなよ。ズルとかしないから」
向かいの筐体からひょいと顔を覗かせて。
「……そもそも」
少年は口元に笑みを浮かべる。
「ゲームに参加するのは兄さんだけだから」
……は?
「おいっ──」
「さあ対戦者が揃いました。両者キャラクター選択画面に移ります!」
兄弟手分けして操作するのかと思えばゲームに参加するのはたった一人だと!?
片手でも打ち負かせるとでも思って高を括っているのか。こっちは隠し技なんざ使わなくても実力があるんだよ! 今度こそ舌打ちを決めて前のめりになりながら筐体に齧り付く。
こうなったら。一戦目から手加減なしで圧倒的力量を見せつけて二度とゲームが触れられなくなるほどの絶望感を味わせてやる──!