You are Game Master!
まさか。
「げぇっ本当だ。空っぽじゃん」
硝子の向こう側にはぬいぐるみのクッションとなるボールしか残されていない。あれだけ金を注ぎ込んでおいてこの結果とは残酷なことだ。
「お前、ここ離れただろ」
クレイジーが睨み付けるが対するタブーはふるふると首を横に振って。
「マスターがいったからはなれてないよ」
「じゃあなんで取られるんだよ」
詰め寄るクレイジーにタブーは淡々と。
「……あのひとたちが」
指をさして応える。
「ぼくのこと、じゃまだって」
──タブーの指をさした方角を追うとそこには若い男女のグループがいた。喫煙所があるにも関わらず煙草を吸いながら歩いて音楽ゲームをプレイ中の男性の目の前をわざと通りすがって邪魔をしたり。果てはクレーンゲームをプレイしていたカップルを脅して退去させ、受取り口付近まで運ばれた景品を我が物顔で横取り。
「……ハイエナか」
「なにそれ」
クレイジーはきょとんと。
「直前までプレイしていたプレイヤーが離れた隙に景品を落とす行為の名称だ。行なった側は額の負担が軽く景品も得られて利益しかないがされた側は溜まったものじゃないだろうな」
我々の受けた屈辱のように。
「そういうこと」
納得をしたようにクレイジーはタブーを見た。本人はそう訴えやしないが恐らく無理矢理押し退けられたか突き飛ばされたか。
「どうする?」
「お前の考えは凡そ把握しているがフェアじゃない」
マスターが応えるとクレイジーは膨れて。
「このまま引き下がろうって?」
「そうは言ってないだろう」
「じゃあ、」
「間もなく締め切りでーす!」