You are Game Master!
……こいつ。気付いている……?
どうするんだよとばかりに視線を送る弟を少しばかり疎ましく感じてしまいながら。この場は何とか話を逸らせて誤魔化すか或いは腹を括り正体も何も種明かししてさっさと退散するか。だがそれではまるで奴らの思う壺では──
「ちょっとぉ!」
この声は。
「触んないでよサイッテー!」
現場を目にせずに聞けば語弊を招くようだがどうやら男たちと一緒に行動していた女たちも重要参考人として連行されるようだった。抵抗を示しているがこの手のものには慣れているのか警察もはいはいと受け流している。
「やーだー!」
と。女の手元から何かが床にぽすっと。
真っ白な羊のぬいぐるみ──それはマスターとクレイジーのふたりがタブーの為に手に入れるべく小銭を握って奮闘していたクレーンゲーム機の景品だった。思わず目を奪われていると、歩み寄ったタブーが拾い上げて。
「た、」
「お前それ汚いだろ」
タブーはぬいぐるみを見つめている。
「捨てとけって」
「ううん」
……目を丸くする。
「これがいい」
ぬいぐるみをぎゅっと抱き締めて。
「ふたりが、ぼくにとろうとしてくれた。とくべつで、たいせつだから──」