You are Game Master!
あと少し、といったところで。
「……遅いな」
落とし口手前でまたも落下するぬいぐるみに小さく息を吐き出して顔を上げたが両替に向かった筈の弟の姿は未だ窺えなかった。用意しておいた小銭も尽きてしまったし流石にこれ以上は自分ではどうにもならない。
「タブー」
呼び付けて、
「此処で待っていろ」
仕方がないので一旦この場を任せて様子を見に行くことにした。まったくただの両替だというのに弟は何を手間取っているんだか──
概ね予測していた通りだった。
「ありがとうございました」
頭を下げてひと息。
「……お前は何をやっているんだ」
「だ、だってよくあることだろ。メダル貸機と両替機を間違えることなんて」
紛らわしいんだよとぼやいている辺り己の否を認めていないらしい。店員が女性だったものでどうにか対応してもらえたものの。
「次からはしっかりと確認しろ」
「分かってるよ……」
ああ。不貞腐れてしまった。
「タブー」
先程のクレーンゲーム機の前まで戻ってきた。あと数回ほどで落とせるだろうか。
「待っていろ。すぐに」
「とられちゃった」
……え?
「ぬいぐるみ。とられちゃった」