You are Game Master!
わざとらしく。クレイジーがきっと鋭い視線を送った先には対戦相手の男二人がいた。オールバックの髪型の男はポケットに両手を突っ込みながら事実煽るように顔を寄せて。
「ぼくぅ、もしかして怖いのかなあ?」
「嫌ならやめてもいいんだぜ?」
静かに見据えるマスターの袖を掴んで寄り添いながら負けじと睨み返す。
「棄権した方がいいのはそっちじゃないの?」
「……ああ?」
刈り上げの男は眉を寄せる。
「チート。妨害。いずれもゲームプレイヤーの風上にも置けない腐ったプレイングだ」
「十分すぎるくらい犯罪行為だと思うけど」
言えば揃えてけらけらと。
「勝つためには手段を選ばねえのよ、俺たち」
「対策できねーのが悪いんだろ?」
オールバックの男はもう一度顔を寄せる。
「それとも通報してみるか?」
……未成年か。
この手の行為で警察に通報したところで知らぬ存ぜぬといった調子で躱し即日解放されるのが目に見えている。逃げるのは容易いがこれだけ目立つ髪色では二度と辺り一帯を出歩けまい。とはいえ、今度此方が被害を回避する為だけに姿形を化かすのも馬鹿らしい話だ。
「くく」
どうやらゲームが始まるらしい。男らは答えを待たず筐体の方へ向かった。短く息を吐いたがクレイジーは未だ袖から手を離さない。
「ひ、」
始まったのは男たちのゲームだというのにそのゲーム画面から汲み取れる冷たく迫り来る空気に小さく悲鳴を上げた。大丈夫、と何を聞くより早く返されたが兄として弟がパニックに陥りみっともない姿を晒すなど見せたくはない。