You are Game Master!
……まさか。
「やってまいりました、決勝戦!」
歓声。
「アーケードバトルトーナメント最後の戦いを飾る名誉あるゲームはこちら!」
店員の男は薙ぐように手のひらで指し示す。
「ゾンビパニック!」
参加者や観客に満たされた会場の空気は最高潮にまで達していた。
今回のアーケードゲームはガンシューティングゲーム。筐体にケーブルで接続されたガンコントローラーを駆使して次々と襲い来る敵を撃破するという極めて単純なものである。
と。言いたいところだが。
「クレイジー」
ホラーゲームとは人を選ぶもの。
「やだやだやだやだ」
歓声の中意気揚々と現れた対戦相手の男二人に対し腕を引かれながらズルズルと。先程準決勝を制した雄姿は何処へやらその姿は散歩を拒否する犬か、はたまた歯医者を嫌がる子供か。
「兄さんだって知ってるだろ……!」
今にも泣きそうな顔で必死に抵抗を示しながら──ご覧の通りクレイジーはホラー系統が大の苦手なのである。
自分こそ隻眼隻腕に戦いとなればその残虐たる立ち回りとホラー顔負けな見た目と行いをしているではないかと突っ込まれそうなところだがそんなことは本人にしてみれば関係ない。
「嫌がったところで仕方ないだろう」
マスターは小さく息を吐く。
「ううぅ……こうなったらゲームを破壊して」
「プライドまで捨てる気か!」
「──あれあれぇ?」