You are Game Master!
「っ、!」
クレイジーは目を開いた。
死角より飛び込んできた足蹴りに一瞬だが気を取られたのだ。すかさず体勢を整えてパネルを踏むもこれで終いにするつもりはないらしく、直ぐさま次の蹴りが飛んでくる。
……、始まったか。
客に紛れて観戦していたマスターはその行為を見極めて静かに目を細めた。最初の対戦相手といい何か仕掛けてくるものだとは思っていたが向かって右側のステージを有無を言わせず奪取したのもそういう意図があったからこそか。
恐らく店員は気付いているが先のやり取りから察するにああも気弱では指摘も期待できない。となれば弟の立ち回りに賭けるしか──
……いや。
心配するまでもないか。
「くっ」
編み込みの男は焦りの色を浮かべる。
どういうことだ──ステップに合わせて蹴りを仕掛けてものらりくらりと躱しやがる。加えて最高評価も逃しやしない。
「──見えてないとでも思った?」
ぎくりと。
「安直すぎるんだよね。右目が無いから右側が死角とかそんなの誰かが目を付けるより以前に当人が一番警戒するポイントでしょ」
魅せるターンの最中に窺えたのは。
「ま、分かるはずもないか」
紛れもなく。
「……ご愁傷さま」