You are Game Master!
きょとんとして其方を見る。
「見られている」
次のひと言で大方理解は出来た。
「……ほんっと正義の味方って暇だよね」
「言ってやるな。仕事の内だ」
それに、とマスターは続けて、
「まだ完全には気付いてないようだ」
自販機に小銭を入れてボタンを押すと程なく缶コーヒーが落ちてきた。取り出し口からそれを受け取ってタブを開くその背を遠く二つの影が見つめている。分かりやすく視線が刺さるのは敵か否か確信が持てないでいるからだろう。
「お前も飲むか?」
「それコーヒーじゃん」
「微糖だ」
マスターはくすっと笑って差し出す。
「次の試合はお前だろう?」
アーケードのゲーム大会の回転率というものは基本的に早い。必ず五分以内にはゲームが終了するのでこうして話し込んでいる間にも二人の出場する試合が迫ってきていた。
「ふふ。いいの?」
クレイジーは缶コーヒーを受け取る。
「相手の人泣いちゃうかも」
「随分な自信だな」
「当然」
肩を竦めて小さく笑う、その姿は。
「僕は兄さんの弟だから」
──まるで。