神のみぞ知る世界は



──不思議な鈴の音が響いた。

優しいけれど何処か儚いそんな鈴の音が。

「来やがったか」

空気は一転して静けさが広がる中、入り口の両開きの扉が軋み開かれた。現れたのは牛の頭をしたふたりの大男。しかしそれぞれ此方に進むでもなく扉入り口の両脇に立つと次いで真っ白な蔵面を付けた幼な子が神楽鈴を一定の間隔で鳴らしながらゆっくりと歩を進めて。

……その背後。姿を見せたのは。

「……!」

思わず、息を呑んだ。

「この祭りの主役のお出ましだね」


まるで白無垢のような一点の曇りもない真っ白な和風衣装を身に纏い歩く。頭を飾るのは緩く捻れた神獣の角。普段片目を覆い隠しているはずの包帯は取り払われ代わりに目元までを隠すようにして薄白のベールが垂れている。

間違いない。

敵組織亜空軍の指揮をとっている悪の首謀者。ルーティが目にしたのは創造神マスターハンドと破壊神クレイジーハンドだったのだ。


「びっくりした?」

訊ねるピットに繰り返し、頷いてみせる。

「……ということは」

マスターとクレイジーより前を歩く少年が気になっていた。口元のみ晒した狐面を被っており普段と異なる和風衣装を身に纏っている。その足下はまるで狐の御足のように精巧に作られた靴で兵児帯も相俟って本物の狐のようだった。

此方は恐らくタブーなのだろう。
 
 
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