神のみぞ知る世界は
「ルーティ!」
……ですよね。
「き、キィィィン、って……耳が」
「何かあったらどうするのさ!」
クレイジーがルーティの側を離れたあの直後。その一瞬の隙を突いて手を引き大神宮の外まで連れ出したのはピットだった。
「ううぅ……」
「私は忠告しましたよ」
助けを乞うようにちらりと視線を遣ったがパルテナはにっこりと笑って、これである。
「神様に喧嘩を売るなんて罰当たりだよ!」
「ものすごい特大ブーメランを見た気がする」
「ボクは天使だからいいの!」
理不尽の極み。
「すっかり霧も晴れましたね」
森全域を包み込んでいた濃霧は確かにすっかり晴れ渡り茂みから頭を覗かせていた野うさぎが此方の視線に気付くなり慌てて逃げ出して。
小鳥はさえずり、空へ飛び立つ。
振り返れば大神宮の門は固く閉ざされていた。宴などまるで嘘だったかのように静かに佇んで──けれどあの扉を開いた先では今もまだ八百万の神々が騒いでいるに違いない。
「ルーティ!」
「、うん」
一枚扉を挟んだ先に。
「──今行く」
神様の世界はある。
「、……あのクソ餓鬼どもが出てこなかったらどうするつもりだったんだ」
「まさかブラピ心配してたのか?」
「全く無いね」
「あはは」
苦笑いを浮かべる。
「来てくれるよ」
「なんで?」
さあっと柔らかな風が吹き抜けた。
「──何となく、かな」
誰も教えてくれない。
本当の答えは。神のみぞ知る。
end.
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