神のみぞ知る世界は
「──創造神様。破壊神様」
制止させるべく口を開いたのは蔵面を付けた子供だった。少年か少女か、その紙切れの下が果たして人の子と同じ作りなのか定かではないが兎角その子供は以降の言葉を続けずに。
「分かってるよ」
クレイジーは溜め息をひとつ。
「本気で壊してやろうなんて思っていない」
誰より安堵したのは蛇の男である。絡み付いた鎖が解かれたような感覚に硬く張り詰めていた表情も緩むというもの。その様子を見逃す筈もなかったマスターはにやりと笑みを浮かべて。
「命拾いをしたな」
くく、と笑う声がこぼれる。
「外道……ッ」
「蛇の癖に鼠のような男だな」
「創造神様」
煽るマスターを三度制止させるように。
「……神聖な場を脅かす邪の気など無用。己が在るべき場所へ帰り役目を果たせ。……蛇神」
静まっていた会場は蛇の男の退場によって再び活気を取り戻してきた。騒ぐ声や音楽が何事も無かったかのように神在祭を祝う。
「はいはい。戻れってんでしょ」
蔵面の子供の痛いくらいの沈黙と視線を受けてようやくクレイジーがルーティの側を離れた。
「あーもうやだな。気を抜いたもんだから」
「気持ちは分かるが仕方がないさ」
「……あれ」
きょとんとして首を傾げる。
「さっきの奴」
怪訝そうに辺りに目を配らせながら。
「どこ行ったんだろ──」