神のみぞ知る世界は



伸びた手を。躱すように踵を返した。

何か背で叫ぶ声が聞こえたような気がしたが、関係ない。振り切るように早足で前へ進み出て酔い覚めの水を会場をゆっくりと巡って配る白装束を身に纏った狐に迷いなく歩み寄り流れるような動作でグラスを奪うと。


「──ッ何しやがる!」


穏やかでない声に会場内がざわついた。

「……?」

最高位の神が招かれる席でこの宴にも飽き飽きとしていた頃。マスターとクレイジーもそれに気付かないはずがなかった。

「酔いは覚めましたか」

妙に静まった会場の中で少年の声が響く。

「てめえ……」
「訂正してください」
「何の話だ」
「さっき言っていたことです」

マスターとクレイジーは互いに顔を見合わせて様子を窺うべく遂に立ち上がる。

「、いけません。創造神様、破壊神様──」


蛇の旦那と呼ばれていただけあってその男の目付きは切れ長で鋭く肌の表面には鱗も窺えた。鼠が蛇に睨まれる等とは。だからといって今更怖気付いて身を引くつもりもない。

「はん。黙って言わせときゃいいものを」

蛇の男はずいと顔を寄せて脅しにかかる。

「喰われたいのか。……鼠」
 
 
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